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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(あ)3067号 判決 1952年4月10日

主文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中百二十日を本刑に算入する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人池田清治の上告趣意について。

所論は、単なる法令違反の主張であるから、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、当審の訴訟記録によれば、第一審判決が前科の一つとして認定した昭和二二年八月七日言渡の懲役三年の刑(未決勾留日数二〇日通算、同年同月一五日確定)は、昭和二五年七月二五日その刑の執行を終了したものであり、また、同懲役一年六月の刑(減刑一年一月二〇日、昭和二二年四月一四日仮釈放)については昭和二二年九月一日仮釈放取消され重き右懲役三年の刑の執行終了後昭和二五年七月二六日より残刑執行され同年八月一〇日再仮釈放されその再仮釈放の満了日は昭和二六年一月二〇日となっていたものであることが認められる。されば、本件犯罪は、右懲役三年の刑に対しては累犯であるけれども右懲役一年六月の刑に対しては仮出獄中の犯罪であって累犯とならないものである。従って、第一審判決が右両懲役刑を共に前科として刑法五九条を適用したのは失当であるけれども同法第五六条、五七条を適用したのは正当であるといわなければならない。そして、刑法五九条は、三犯以上の者でも再犯の例すなわち同法五七条の例によるべき旨規定しているのであるから、原判決が同法五七条の外五九条を適用した違法があるからといって、刑訴四一一条を適用して原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。それ故、所論は、結局採用できない。

同第二点乃至第五点について。

所論は、いずれも原控訴審で主張しなかった第一審手続の単なる訴訟法違反を当審において新らたに主張するに過ぎないものであるから、第二審判決に対する適法な上告理由を定めた刑訴四〇五条に明らかに当らないし、また、同四一一条を適用すべきものとも認められない。

同第六点について。

所論は、量刑不当の主張であって、明らかに刑訴四〇五条の上告理由に当らないし、また、同四一一条を適用すべきものとも思われない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、刑法二一条、刑訴一八一条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

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